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ありたい姿、なりたい姿。

  • 執筆者の写真: tsuruta
    tsuruta
  • 2021年1月19日
  • 読了時間: 5分

更新日:2021年1月23日

経営戦略やIR関連の仕事を始めて44年。5千社を超える色々な投資家に会ってきた。アナリストも300人を超える方々と仕事をしてきた。現在は、企業の30代のIR担当者との話が中心になった。これまでに800社であろうか。年代も自分の娘や息子と話をしている感がある。


各社のIR責任者と会って感じるのは、経験の差というよりも、企業文化とIRという仕事に対する個人の意識の持ち方の違いを感じることが多い。


要は「千差万別」ということである。


ただ、それぞれのIR担当は傾向としては目先の3か月の過去(決算)の解説と将来1年くらいの感じさせ方だけを中心に話をしている方がほとんどである。一方で、その会社は債券を発行し、また、上場して資金調達している。どういう形にせよ何らかの形で「資金」を資本市場から調達している。資本市場から資金調達しているならば、資金の出し手、債券や株の買い手に対する「責任」がある。そのことに対する、ある種の「誠実さ」が必要であろう。5年債を出すのであれば、こういう投資をして、5年後にはこういう会社になりたい。そういう経営者の思いがあるであろう。だが、現実は資金余剰が市場にあり、簡単に資金調達ができる。従って、中長期の話がおざなりで、成長ストーリーに関心があまりに薄い会社が多い。中長期のことについて、話が出来ないことに違和感を持たないIR担当者が多いことに驚く。


その理由は簡単だ。市場自体がヘッジファンドやデイトレーダーを中心に回っていることがあげられる。彼らは短期の見方で十分だ、とする。それにあわせて、アナリストが短期の見方しかレポートに書かない。そうしないと、読んでもらえないからだ。しかし、本当だろうか。ただ、多くのアナリストと話をすると分かるのだが、今のアナリストは短期のことしか見る力がない。経営の本質がわかっていないし、実業の経験もない。どうでもいい数字や目先のことにしか関心が彼らにはないのだ。また、証券会社の経営陣も、それ以上のことは望んでいない。市場の主体が短期筋であれば、そこまで中長期の見方が出来るアナリストが重要ではないのだろう。


この資本市場における「見方の短期化」が色々な弊害を呼んでいる。


一つは目先の情報で株価の上下が激しくなる。業績に関係のない、つまらないニュースが株価の変動を生む。例えば、アナリストの当たらない株価予想だ。業績には何の関係もないが、株価を大きく変動させる。根拠を読むと大したことはなく、ほとんど会社予想の±10%の話である。これだけで動く。レポートを読んでいない投資家もそれだけで売買する。証券会社の営業ツールであろう。長期投資家は文章は読むが、予想数字はカウントしない。彼らは、3年後の経営数字を予想する机上での勉強はしても、「経験」をしてきていない。我々の意思決定には、1/100の影響もない。ただ、貶して本来の価値よりも下がれば買う機会にはなる。囃して上がり過ぎれば持っている株式を売る機会を作ってくれる良い道具であろう。冷静に見ているが、本来は経営をじっくり見て、中長期でも経営の見方を間違わないで欲しいものだ。


二つ目は長期に利益を得る兆し、また、逆に失いつつある兆しを見逃す癖がある、ということ。例えば、企業の些細な不祥事だ。将来、大きな品質事故やガバナンスを揺るがすことになりかねない重大事に繋がることがあるのだが、資本市場はあまり不祥事を見ようとしない。あくまでも目先のことが中心だ。ここは中期の投資家は経営の質を見ようとするので、重要なのだ。そして、投資の仕方を注意深く見ている。M&Aだけではない。工場の建設や稼働の状況も見に行く。ささないことだが、とても重要だ。メーカー経営の経験がある強みであろうが、私は当たり前とおもっているが、アナリストにそういう話をすると、見ても仕方がないという。彼らはもともと工場での効率的な運用が分からないということと、企業は良いところしか見せず、見せたくないところは隠す、という。これは隠しても隠し得ないところが製造会社にはあるのだ。長期投資家はこういう所は、見逃さない。


三つめは、短期的な見方になると上がるなら疑わない。下がるなら疑う。という姿勢になる。これでは大きな利益が取れない。それはそれでいいのだろうが、逆を行くのが本来の投資家ではないか。上がるから疑う。下がっても疑わないのが長期投資家だ。一旦、決めたらそう簡単には動かない。決めるまでは大変だが、それでいい。決めるまでに2,3か月かかることもざら。そういう投資家に選ばれれば発行体も安心であろうが、多くは買っても数週間で売る。その割にやんやと企業やアナリストにせっつく。せっつかれるから短期の見方を言う。言えば言うほど「もっと」となる。この悪循環である。それが今の市場である。


こういう傾向は、今始まったわけではない。90年頃からのビックバンから始まったもので30年以上の長い歴史だ。変わらないであろう。そうであれば、その癖を見て「本質」を掴んでおくことである。対応や応用はそれで良い。ただ、今も昔も変わらぬことがある。


それは、資金の出し手と取り手の関係性における忠実義務であろう。「誠実」であるべきである。それだけである。5年や10年で資金調達するなら、キチンと中期計画や中期のKPIを明示しておくべきであろう。そうでなければ投資しないことだ。当たり前のことをきちんとするのが事業である。


そういうことを感じた一日であった。


宮古島から台湾方面を見て、昔の人がいつか渡りたいと思った風景を感じた一日であった。

なりたい自分、ありたい心、行きたいところ。色々あるが、「羅針盤」は必要であろう。










 
 
 

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